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두자춘(일한번역문)
杜子春(芥川龍之介)
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故郷を想う
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아우님이 이토록 활약하는 줄 몰랐습니다. 옹근 2년이나 사이트들에서 잠적하다가 돌아오니 아우님이 보이시네. 반갑수다. 이제 우리 만나면 그간 회포를 잘 풀어 봄이 어떠하리오...
곧 《간도빨치산의 노래》전문을 싣도록 하겠습니다. 이 글은 연변문학 2013년 제2기와 제3기에 실렸던 글입니다. 연변문학 2기에 조선글로 된 원문이 실려있습니다.
좋은 글 잘 읽었습니다. 《간도빨치산의 노래》전문은 어디에서 볼수 있습니까? 읽어보고 싶은데요.그때 상황도 더 료해해보고...
참 의미심장한 이야기 입니다.
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14『夜(よる)の蜘蛛(くも)』
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2011-11-10
14『夜(よる)の蜘蛛(くも)』 ―愛知県― 昔、あるところに若い男が住んでいたに。 そろそろ嫁にもらう年頃になっても、いっこうあわてない。村の年寄りたちが若者に聞くとな、 「わしゃぁのん、嫁には注文があるじゃに」 と言う。 「注文いうて、どげな注文ぞん」 「まず、器量(きりょう)がようて、なんにも食べず、よく働く女房がええ」 「馬鹿(ばか)こけや」 年寄りたちはあきれて、もうその話はせんようになったぞん。 ところが、ようしたもんで、二、三日まえから、若者の家に、美しい女がいるようだん。 ある夜に、道に迷ったとか言うて、若者の家に来たまんま居ついてしまったものらしか。 器量はよし、働き者で、物も食べぬちゅう望み通りの女で、若者は有頂天(うちょうてん)の真っ最中であるらしか。 「わけのわからん者もらいくさって、今にろくなこたあねえぞん。ええからほっとけ」 と、年寄りたちはブツクサ言っとったが、若者の方は、知ったこっちゃねぇに。 今日は、女房の里へ顔を出すのだ言うて、女房のあとついて、山道を登って行った。 ずいぶん来たところで、若者は急に腹が痛み出したと。 「もうひと息じゃ、わしの背中におぶさったらええに」 と言うなり、若者を抱き起こし、ヒョイと背中へ乗せてしもうたとな。 腹の痛みも、少しゃ良うなり、女房の背のぬくもりが気持よくて、若者はウトウトしだしたと。 どこやら、暗い山の中を、女房はスタスタ歩いているらしいがのん。 そのうちハッと気がつくと、女房は、若者を草の上に降ろし、自分も一服(いっぷく)しとる様子じゃ。若者が女房をねぎらおうと声を掛けようとしたとき、女房が突然大きな声出して、 「お―い、捕(と)ってきたぞお、みんなこいやぁ」 これを聞いて、若者は驚ろいたもんな。 「さてはこの女、魔性(ましょう)のもんだったかん、えれえことになったぞん」 そこで女房のすきを見て、そばにある菖蒲(しょうぶ)と蓮(はす)の生い茂る草ぼらへ飛び込んで、身を伏せたと。 こわごわのぞいてみると、大きな蛇の姿に変わった女房のまわりへ、大小の蛇が目を輝かせ、ウヨウヨ集まってきたじゃ。 「どうした獲物(えもの)が見えんぞ」 「しまった、うっかりしとって、逃がした」 「どうする」 「今夜、みんなで捕りに行こうや」 これを聞いて若者は、ころげるように山道走って、やっと村へ戻ったと。 若者からわけ聞いた村人たちは、若者の家の前でたき火たきながら、手に手に光物構えて、蛇の襲撃(しゅうげき)を待っとったと。 すると突然、空から大きな蜘蛛(くも)が、若者の前へスルスルと降りてきた。 脚(あし)をひろげ、若者に飛びかかろうとする前に、若者は、そばにあった箒(ほうき)で、蜘蛛をたき火の中へたたき落としたに。 なんとこの大蜘蛛は、数十匹の蛇に変わり、たき火の煙と炎に巻かれて、みんな死んでしまったぞん。 蛇が蜘蛛に化けて、やってきただに。 このことがあってから、 「夜の蜘蛛は親に似ていても、きっと殺せ」 と、言うようになったぞん。 また、この日が五月五日だったので、それ以来、五月五日には、魔性のものを近づけない菖蒲と蓮に葉を、必ず屋根の上に乗せておくと。
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13『人消(ひとけ)し草(ぐさ)』
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2011-11-10
13『人消(ひとけ)し草(ぐさ)』 ―大分県― むかし、むかし。 あるところに、爺さまと婆さまが住んでおった。爺さまが隣村へ用たしに行った帰り、山道を歩いていると、むこうから一人の旅人がやってきた。 そうしたら、突然道のわきから、ザザザッ―と大きな蛇(へび)が現われて、あっという間にその旅人を飲み込んでしもうた。 爺さまは驚(おどろ)いた。 <これが噂(うわさ)の人喰(ひとく)い蛇か。おとろしい、おとろしい> と思うて、木陰に隠れると、じっと様子を見ていた。 人喰い蛇は、人を飲み込んだもんだから、腹をでっこうして、ウンウンうなって、もがいている。そのうちに、ノタリノタリと動き出して、道のそばにはえている草をムシャムシャ食べ始めた。すると、蛇の腹がだんだんちいそうなっていく。やがて、元の通りの腹になると、気持ちよさそうに、スルスルとやまの奥へ入って行った。 しばらくして、爺さまは、もう蛇はおらんだろうと、さっき蛇が食べていた草を見に行った。それは、今までに見たこともない、青々とした草だった。 <これを食えば、腹の中のものはみんなとけて、元の通りになるのか> と思うて、その草を根っこごと抜いて、家へ持って帰った。 その晩、爺さまは人喰い蛇と不思議な草のことを、婆さまに話して、大好物のソバを沢山作らせた。爺さまは、ソバができ上ると、どんどんどんどんすすりこんだ。 あんまり沢山食べるので、婆さまが心配をして、 「爺さま、いいかげんにせいよ」 というても、 「心配いらん。いくら食べても、この草があるから大丈夫だ」 というて、いうことをきかん。とうとう、十人分のソバを一人で食べてしもうた。 腹でっこうした爺さまは、青い草を取り出して、蛇と同じようにムシャムシャ食べ始めた。そうしたら、急に寝むくなってきたので、爺さまは、そのまま布団(ふとん)にもぐり込むと、ぐっすり寝こんでしもうた。 次の日、日が高くなっても、爺さまは起きてこない。それで婆さまが、 「爺さま、もう起きろや」 というて、布団をめくると、爺さまの着物だけがあった。 <おかしいなぁ―> と、着物をとってみたら、なんと、寝床の上には、ソバが山盛りになっていた。 蛇が食べていた草は、”人消し草”というて、ひとの体をとかす草だったそうな。だから、人が食べれば、体がとけてしまうので、爺さまもとけてしまったというわけさ。 もうし、もうし、米ん団子
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12『白米城(はくまいじょう)』
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2011-11-10
12『白米城(はくまいじょう)』 ―青森県― むかし、戦国の世には、日本のあちこちでいくさがあった。力の強い者が力の弱い者をほろぼして、自分の領土をどんどん広げていった。だけれども、力は弱くても、山の上の城を持っていれば、なかなか、いくさには負けなかった。どこから敵が来てもすぐに分かるし、矢を射たり、石を投げつけたりして、防ぐことができる。 陸奥(むつ)の国、青森県に、大茂城(だいもじょう)という山城(やましろ)があった。あるとき、隣りの国の南部(なんぶ)弥太郎(やたろう)が大軍でせめてきた。それでも大茂城では、山の地形を利用して、南部勢(なんぶぜい)を防いでいた。ところが、山の上にある城だから、井戸の水がでない。おまけに、ここのところ雨も降らなかったから大変だ。何日も城にたてこもっているうちに、城に蓄(たくわ)えてあった水も、だんだん無くなっていった。 それを知っている南部勢は、 「水が無くなれば、我(わが)軍の勝利だ」 といいあい、城を遠まきにして見守っていた。 ある日のこと、南部の見張りが大茂城の様子をうかがっていると、不思議なことが起った。水が無いと思っていた大茂城では、ザァーザァーザァーと水をぶっかけては馬を洗っている。見張りがさっそく、南部の殿様に報告すると、殿様は考え込んでしまった。 「うーん、敵に水さえ無くなれば、いっきに勢めほろぼすつもりであったが、水で馬を洗うとは、きっとどこかに水の出る所があるに違いない」 しかたなし、城を勢め落すのをあきらめ、引きあげようとしたとき、一人の老婆に出会った。南部の殿様は、 「これ、これ、大茂城には、どこか水の出るところがあるのか」 と聞いてみた。老婆は、 「いーや、あの城には水の出る所などありゃぁせん」 「でも、城の中では、水で馬を洗うておるというではないか」 老婆は、ハッハッハッハッと高く笑うと、 「ようく見なされ、あれは水ではなく、白米じゃ。雀(すずめ)がチョコチョコついばんでいるのが何よりのあかしじゃ、馬を白米で洗うて、水のように見せかけているわけじゃよ」 南部の殿様は、老婆のことばにハッとした。 「そうだったのか、うまうまとだまされるところであった」 というが早いか、大声で、 「ものどもー、よーく聞け、大茂城には水が無いぞー。相手は弱っている。今こそ、あの城をせめおとせーー」 と、号令をかけた。殿様のことばに勢いづいた南部の軍勢は、それーっとばかり、大茂城へ押しよせた。 水が無くて身体が弱りきっていた大茂城の軍勢は、戦う気力など、ありゃぁせん。あっという間に大茂城は落ちてしまった。 それからというもの、城の秘密(ひみつ)を教えてしまった老婆の家では、皆、早死にをするようになった。 人々は大茂城で死んだ者達のたたりだろうとうわさしたと
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11『比良(ひら)の八荒(はっこう)』
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2011-11-10
11『比良(ひら)の八荒(はっこう)』 ―滋賀県― 三月も下旬になるちきまって、滋賀(しが)の琵琶湖(びわこ)のあたりでは、比良(ひら)の山(やま)から、ビュ―、ビュ―と風が吹き荒れる。この風を「比良八荒(ひらはっこう)」というのだが、土地の人々は、「比良八荒」が吹くと、湖に沈んだ心やさしい、娘の悲しい物語を思い出す。 むかし、琵琶湖に近い比良の山では、沢山(たくさん)の坊さまが修行をしていた。ある日のこと、一人の若い坊さまは、修行のため、病いをおして湖の対岸に渡った。そして、村々を廻り歩き、たくはつをしていたのだが、ちょうど木の浜の村に入ったとき、熱高く、一歩も動けず、道端(みちばた)にうずくまってしまった。そこを通りかかった村の娘お光は、坊さまを家に運び、休ませた。 高い熱が何日も続いたが、お光の手厚い看病(かんびょう)の甲斐(かい)があって、一日一日薄皮をはぐように坊さまの病いは良くなっていった。いつしらず、お光のこころには、坊さまへのほのかな恋心がわいてきた。 「長い間ごやっかいになりました。おかげで病もすっかり良くなりましたので、比良の寺に戻ります。この御恩(ごおん)は決して忘れません」 坊さまのことばに、お光は泣いた。 「お別れしたくありません」 お光の優しい心を知っている坊さまも同じ思いであった。修行をとるか、恋をとるか、坊さまは迷いに迷った。しばらくして、坊さまは、 「わたしは比良に帰ってから堅田(かただ)の満月寺にこもり、百日の修行をいたします。その百日の間、湖を渡って毎夜、わたしのもとへ通い続けることができたなら、あなたと夫婦(めおと)になりましょう」 といった。 坊さまが帰ってから後、お光は毎夜、タライ舟をこいで湖を渡った。月の無い夜の湖は暗い。浮見(うきみ)堂の灯りが目印であった。十日、二十日と過ぎてゆく。お光は修行を続ける坊さまの後ろ姿をそっと拝んではまた湖を帰っていった。 八十日、九十日が過ぎる。雨の日も、風の日も、雪の日も、お光はタライ舟をこいだ。坊さまはだんだん恐(おそ)ろしくなってきた。この暗い湖をたった一人、タライ舟をこいで、何十日も欠かさず通ってくる女に、鬼がとりついているのではないかと、恐ろしくなった。 とうとう百日目がやってきた。お光の心はおどった。 「今日が坊さまと約束をした百日目」 そう思うと、うれしくてうれしくて、タライ舟こぐ手もかろやかだった。 一方、坊さまは、 「今日で百日目、これは、ただの女ではない。鬼だ」 と思い。目印の浮見堂の灯りを、フッと消してしまった。急に灯りが消えたので、あたりは真暗になり、お光は途方にくれた。それでも一生懸命舟をこいだ。湖の上をさまよっているうちに、風も出てきた。思う間もなく、ビュ―という一陣の風が吹き、とうとう小さなタライ舟は湖にのまれた。お光は、 「お坊さま――」 と一声さけぶと、湖底に沈んでいった。もうすぐ春がくる、三月の末のことであった。 それからというもの、毎年、三月の下旬になると、比良の山から風が吹き、湖があれるようになった。 人々は、お光の怨みで風が吹くのだと言い伝えている。
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10『踵太郎(あくとたろう)と山姥(やまんば)』
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2011-11-10
10『踵太郎(あくとたろう)と山姥(やまんば)』 ―青森県― 昔、ある山陰(やまかげ)の崖(がけ)に小さな小屋を建てて山姥(やまんば)が棲(す)んでいたそうな。 山から里にやって来ては、酒を出せ、肴(さかな)を出せと、家ごとに叫んで歩いていたと。 そのころ里に若夫婦がおったと。 嫁のお腹(なか)には赤ちゃんが育っていたと。 あるとき、夫は町に買い出しに行くことになった。 「山姥がこわいから、わたしもつれてってけへ」 「外は雪コ降ってるだば、転んだり冷えたりしたら腹(はら)の赤児(ややこ)にさわるじゃあ。山姥ぁ、今日は来ねと思うはで」 「したどもぉ」 「そんなに心配だば、お前を長持の中に入れて錠(じょうをおろして高いどこに吊(つ)るしておくはで、おとなしくしてへや」 と、嫁を天井の張りにつるして出掛けて行ったと。 ところが、夕暮れになって山姥がやって来たと。 「お父(ど)さいたかぁ」「お母(が)さいたかぁ」 「酒コ出せぇ」「肴コ出せぇ」 と言うんだと。 嫁は、天井の長持の中で息をひそめて震(ふる)えておったと。 「どごに隠れだぁ」 と怒鳴りながら、嫁の箪笥(たんす)の上から針箱を取って炉(ろ)の中へ投げ込んだと。 すると針箱の中の針が火の中からピタンと音をたてて跳(と)んでいって、天井の長持に矢のように刺さった。 「あすこだなぁ」 山姥は、土間に置いてあった鎌を握ると、吊り縄めがけて、ひょいと投げつけた。長持はどたぁと落っこちたと。 それから鉈(なた)で打ち割って、嫁をつかみ出して頭からみりみり食ったと。 夫が夜遅く帰って来たら、家の中がひっ散らかっていて、炉辺に嫁の踵(かかと)が転がっていたと。 嫁もお腹の赤児も食われ、踵だけがシナくって堅くって食い残したんだと。 夫は弱かったんで、ただ山姥を呪(のろ)っていたと。山姥の食い残した踵を紙袋に入れて仏壇に飾(かざ)り毎日念仏を唱えていたと。 そしたらある日、その袋がかさこそ音がした。袋の中をのぞくと、踵がまん中から割れて男の子が生まれていたと。 喜んだ夫は、その子が踵から生まれたので踵太郎(あくとたろう)と名付けて大事に育てたと。 一杯食わせると一杯だけ、二杯食わせると二杯だけ、三杯食わせると三杯だけ大きくなった。こうして、いつの間にか二十才(はたち)になったと。 踵太郎は、お父うからお母ぁが山姥に食われたことを聞かされていたので、二十才になると山姥退治に出掛けることにしていた。 ある冬の寒い日に、踵太郎は平(ひら)たい石と菜種油(なたねあぶら)と太い縄とを持って、山姥の棲んでいる山陰に出掛けていった。何気ない様(さま)をよそおって、小屋に入れてもらったと。 で、山姥の好きな餅を焼くふりをして、平たい石をホドの中にくべ、自在鉤(じざいかぎ)にかかっている鍋に菜種油をそそいで火に温(ぬく)めたと。 「ばあ、餅が焼けたはで」 「手がふさがっとるはで、食わしてけへや」 山姥が口を開けたところへ、「今だ!」と、まっ赤に焼けた平たい石を口の中にほうり込んだ。 「あぢぢ あぢぢ」 山姥は腹をかかえて転げまわった。 そこへ煮立った油をかぶせると、さすがの山姥もぐったりしたと。 踵太郎は、 「お母ぁは、もっと無念だったじゃぁ」 といって、太い縄で山姥を巻きつけると、小屋の外へ引きずって行き、谷へつき落してやったと。 とっちばれ
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9『猿地蔵(さるじぞう)』
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2011-11-10
9『猿地蔵(さるじぞう)』 ―山形県― むかし、あったけど。 むかし、あるところに爺さがおって、白い餅(もち)が大好きだったと。 この爺さが川辺りの畑に畑仕事に行ったときのことだ。 昼げに持って行った白い餅を、口のまわり真っ白にして食べて昼寝しとったと。 そしたら、そこに、猿がたくさん来たと。 「やぁや、こんな処に地蔵さまいたや。こんな処ではなく、川向うさ立てたらいいんでねか」 「んだな」 こういうと、猿たちは手車ちゅうもんを組んで、昼寝中の爺さをその上に乗せて、川の中を川向うへ運んで行ったと。 川越え猿の尻(へんのこ)こ濡(ぬ)らすとも 地蔵の尻こ濡らすな エンヤラ エンヤ 川越え猿の尻こ濡らすとも 地蔵の尻こ濡らすな エンヤラ エンや と、川を渡って川向こうへ据(す)えたと。 「やぁや、ええ地蔵さまだ」 「銭コでも上げて拝(おが)むべや」 と、爺さ地蔵に、とこから持(も)って来たのか銭コどっさり上げて拝んだと。 猿が居なくなってから、爺さ、その銭コ、 「わしにお供(そな)えしたのじゃから、こりゃ、わしがもろぉてもええんじゃろ」 と、家に持って帰ったと。 婆さと二人で、その銭コ拡(ひろ)げていると、そこへ隣りの欲張り婆さがやって来たと。 「あれ、あれ、ここの家の爺さと婆さ、なしてこんげに銭コ儲(もうけ)けたや」 「んだな、あれや、爺さが白い餅、口のまわり真っ白にして寝てたれば、猿たちが来て、地蔵さまどんだって、銭コ上げて拝んでったので、その銭コ貰(もら)ったなよ」 これを聞いた欲張り婆さ、急いで家に戻ると、 「爺さ、爺さ、白餅持って畑さかせきに行け。ほして、口のまわりを白くして寝とれや」 とて、爺さが行くとも言わないのに、むりむり追いやったと。 隣りの爺は、しかたなく畑へ行って、口のまわり真っ白くして昼寝しとったと。 そしたら、猿たちが来たと。 「あら、ら、こげなとこさ、まだ地蔵さまいたや。向うさ持って行くべ」 とて、手車組んで、 川越え猿の尻こ濡らすとも 地蔵の尻こ濡らすな エンヤラ エンヤ 川越え猿の尻こ濡らすとも 地蔵の尻こ濡らすな エンヤラ エンヤ と、川向うへ連れていったと。 すると隣りの爺さ、その掛け声がおかしいやら、手車しとる猿の手の毛がくすぐったいやらで 「へ、へ、へ、へ」 と笑ったと。そぉしたら、屁がプッと出たと。 「あら、ら、ら、これぁ、地蔵さまでねぇ。どこかの爺さだ。さぁさ大事(おおごと)した。早く、ぶん流してやれ!」 と、川にほうり投げたと。 隣の爺さ、流されて銭コ儲けるどころでない。ようやっとのことで川から這(は)い上って来たと。どんべからんこ、ねっけど。
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8『鳥(とり)とケモノの戦争(せんそう)』
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2011-11-10
8『鳥(とり)とケモノの戦争(せんそう)』 ―広島県― なんと昔があったげな。昔にの、狸と狐が山を歩きよったら鶯の巣があったんで、 「ええっ!こがあなもの壊(こわ)してやれ」 ちゅうて、足で蹴散らかしてしもうたげな。 そん中にゃぁ卵が三つあったが、それもみな潰(つぶ)れてしもうたげな。 親の鶯がその様子を見て、よっぽど腹ァ立てたり悲しがって、鳥の王様の鷲(わし)のところへ行っての、仇(あだ)ァとってもらいたい言うたげな。 鷲は、ケモノの大様のライオンのところへ行っての、言うたげな。そしたらそこへ狸と狐が呼び出されたげなの、狸と狐は自分らが悪いとは言われんで、色々考えて鳥の方が悪いように嘘を言うたげな。 そこでとうとう、鳥とケモノが戦争をすることになったげな。 ケモノの方じゃぁ、みんなが集まって作戦の相談ぶつことになったげな。 そのことを知った鳥の方じゃあ、一番小さい蚊(か)を偵察(ていさつ)にやったげな。蚊が三匹柴(しば)の葉の裏にとまっての、聞きよったら、 「狐どんは考えがええけぇ、あれに指図(さしず)をしてもらおう。そいで、狐が尻尾を上げたら進め、尻尾を下ろしたら後へ引け」 ちゅうことになったげな。 蚊がそのことを聞いて戻ったら、今度ぁ鳥は、蜂に頼みに行ったげな。そして、 「狐が尻尾を上げりゃぁその根元のところをチカッと刺してやれ、尻尾を下げるときにゃぁ背中を刺してやれ」 ちゅうて頼んだげな。 いよいよ戦争になったげな。 ケモノ方(がた)じゃぁ狐が指図するんだが、”やれ今だ"と進ませよう思うて尻尾を上げりゃぁ、蜂が来て根元を刺すもんじゃけぇ、痛(いと)うてかなわんで下ろすし、後(うしろ)へ引かしょう思うて尻尾を下ろしとっても背中を蜜が蜂が刺すんでの、蜂を追っぱらおう思うて尻尾をあげるげな。 そがあなこたぁ皆は知らんけえの、狐の尻尾を見とって、進んだり引いたりするんじゃがの、めちゃめちゃで、どうもええことにならんげな。 そんなんでの、鳥が勝ったりケモノが勝ったりしょったげな。 そんときコウモリがの、ケモノが勝ちそうなときにゃぁ、 「おれは足ィ四本あるし、乳が子供育てとるけぇ、おれケモノの仲間だ」 ちゅうて、ケモノ側につき、鳥が勝ちそうなときにゃあ 「おれは羽根あるけえ鳥だな」 ちゅうて、今度ぁ鳥側につき、強い方ばかり味方するげな。 その内、いつまで経(た)ってもきりがつかんけえ、はぁ、戦争やめようちゅうことになっての、喧嘩(けんか)の元(もと)がなくなるように動き廻る時間を決めたげな。 鳥は鳥目ちゅうての、夜目がきかんもんじゃけえ、日中(にっちゅう)動くことになり、ケモノは夜目がきくもんじゃけえ、主(おも)に夜動くことになったげな。 ところがコウモリは、あっち付きこっち付きしたもんじゃけえ、鳥からもケモノからも 「お前なんか、おら方の仲間でない」 ちゅうて毛嫌いされたげな。 それでの、仕様がないけえ、夕方わずかだけ出よって虫ィ食(く)いようげな。 それじゃけぇ、強い方ばっかり味方して、あっちつき、こっちつきするのを<コウモリみたいだ>ちゅうて、今でも言うげな。 もうし、昔けっちりこ。
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7『山伏(やまぶし)と軽業師(かるわざし)と医者(いしゃ)』
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2011-11-10
7『山伏(やまぶし)と軽業師(かるわざし)と医者(いしゃ)』 ―長崎県― むかし。山伏と軽業師と医者が同じ日に死んだ。 三人そろって極楽の方へ歩いて行くと、おっそろしい顔をした閻魔(えんま)様が、大岩の上に座っていて、 「勝手に極楽へ行ってはならん。取り調べをする」 というて、山伏に、 「お前は何の仕事をしていた」 「私は山伏をしていました」 「そうか、お前はいいかげんなお祈りをして、金を取っていたな。地獄へ行け―。」 というた。次に軽業師に、 「お前は何の仕事をしていた」 「私は軽業師をしていました」 「そうか、お前は人の目をごまかして、金を取っていたな。地獄へ行け―」 というた。そして、最後の医者に、 「お前は何の仕事をしていた」 「私は人のためになる医者をしていました。」 「そうか、お前は病人になおらない薬をたくさん飲ませて、金を取っていたな。地獄へ行け―」 こうして、閻魔様は手下の鬼たちに命じて、三人共地獄へおとした。 地獄では、釜の中のお湯がグラグラ煮たっていた。鬼たちが三人を釜の中に入れようとすると、山伏が、 「な―んも心配いらん」 というて、 「ナム、クチャクチャ、アビラウンケン、ソワカ」 と、唱えると、お湯が丁度いい湯かげんになった。三人はお湯の中で、歌を歌い始めた。 それを見ていた鬼たちはたまげて、さっそく閻魔様に報告をした。そうしたら、閻魔様は怒って、 「よし、それなら、針の山へつれて行け―」 と、鬼たちに命じた。 三人は、針の山へつれて行かれたが、今度は軽業師が、 「な―んも心配いらん」 というて、綱(つな)を出し、 「ハッ」 と、掛け声をかけると、軽業師の体は宙に浮いた。山伏と医者は、軽業師の肩の上に乗り、なんなく針の山を越えることができた。 鬼たちがまた、閻魔様のところへ報告に行くと、閻魔様は、赤い顔を増々赤くして、 「それでは最後の手段だ。わしが三人を呑んでやるから、ここへつれて来い」 というた。三人が来ると、閻魔様は、ゴクリと、三人を一呑みにしてしまった。 そうしたら、医者が、 「な―んも心配いらん」 というて、閻魔様のお腹の笑うすじをちょっとひっぱった。すると、閻魔様は急に 「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハ」 とお腹をかかえて笑い出した。医者が、今度は、泣くすじや怒るすじを次々に引っぱったからたまらん。閻魔様は泣いたり、怒ったり、笑ったり、てんてこまいだ。 しまいには、三人をはき出して、 「ええい、こんな悪い奴らは、地獄においておけん。さっさと極楽へやってしまえ」 とさけんだ。 それで、三人は悠々と極楽へ行くことができたそうな。 こるばっかる ばんねんどん。
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6『竜宮猫(りゅうぐうねこ)』
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2011-11-10
6『竜宮猫(りゅうぐうねこ)』 ―福岡県― とんと昔のことや。 あるところに三人の姉妹(しまい)がおったんやと。 おおきゅうなって、三人とも嫁(とつ)いで行ったが盆暮になると、きまって、里の母ごに呼び出されて贈り物ばさせられておったんやと。 上の二人は、さいわい分限者に嫁いだもんやき、なんの苦労もなかばって、末(すえ)の娘は貧(まず)しい男に嫁いだもんやき、いつも、贈り物には困っておったんやと。 そんで、末娘夫婦は、里の母ごに、ことあたんびに呼び出されちゃあ、こきつかわれておったんやと。 それでも、末娘の夫は、気のええ男やったから、そん年の暮には、柴を持って、嫁の母ごのところへ、あいさつばしに出かけたんやと。 ばって、そん男は、浜づいたいの道々に考えたんやと。 「どうせ、嫁の里へ行ったっちゃ、こきつかわれるばっかしや。ほんならいっそのことこん柴を竜神さまに流したほうが、ましや」 そん男は、柴を竜宮へむけて流したんやと。 浜べに座って、柴の流れていった沖の方ば見とったら、竜宮から乙姫(おとひめ)さんがそん男を連れに来たんやと。 竜宮では、龍神さまが待っとらっしゃって、そん男ば見ると、そばの猫ば指してくさ、 「この猫は、わたしの三つの宝のうちの一つだけれど、柴をもらったお返しに、この猫をお前にあげよう。この猫は、毎日、小豆(あずき)を一合食べるから、必ず食べさせておくれ。一合食べれば、必ず、三合の宝物を産む猫だから」 ちゅうて、そん猫を男に与(あた)えたんやと。 男は、乙姫さんに送ってもらい、猫を抱いて我家に帰ってくると、毎日、嫁といっしょに、一合の小豆ば煮て、そん猫に食べさせたんやと。 そんで末娘夫婦は、またたく間に大金持ちになったんやと。 そん話ば聞いた、里の欲ん深けえ母ごが、末娘んとこさやって来て、うむも言わさず、そん猫ば抱いて帰って行ったんやと。 そして、欲の深けえことに、毎日三合ずつ小豆ば食べさせたもんやき、猫は、すぐに死んでしもうたんやと。 心痛(いた)んだ末娘夫婦は、そん死んだ猫の身体ば抱いて帰り、裏の庭に墓ばこさえて、埋めたんやと。 そしたら、そん墓のそばから、竹が二本、三本とはえ、それが、すっく、すっくとのびていってくさ、 ひと風吹けば、ザラザラザラッ、 ふた風吹けば、ザラザラザラッ、 とな、風の吹くたびに、ぎょうさんな黄金(こがね)ば降らしてくれたんやと。 ザラザラザラ、ザンザラン、とな。 それぎんのとん。
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5『木仏長者(きぼとけちょうじゃ)』
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2011-11-10
5『木仏長者(きぼとけちょうじゃ)』 ―青森県― むかし。ある長者が、金(キン)で作った、それはそれはみごとな仏さまを持っていた。長者はいっつも、下男な下女に、 「この世に二つとない金仏(カナボトケ)じゃ」 というて、自慢しておった。 あるとき、下男の一人が山へたき木を取りに行くと、仏様の形をした木が落ちていた。 下男は、 「木仏(キボトケ)じゃ、木仏じゃ」 と喜んで、その木を拾って帰ってきた。 そして、下男部屋の片隅に置き、朝・昼・晩、飯をお供えして、おがんでいた。 それを聞いた長者は、生意気だ、と下男を呼び出し、 「お前は毎日、仏様をおがんでいるそうだが、わしにその仏様を見せろ」 と言うた。下男はみすぼらしい木仏だから、見せたくはなかったが、いいつけだからしかたがない。木仏を持って行くと、長者は一目見て、 「な―んだ、仏様といってもただの木仏ではないか。わしのは金で作った金仏じゃ」 と大声で笑った。それで、下男も黙っておれず、つい、 「金でも木でも、仏様には変わりはありません」 というてしまった。すると、長者は、 「そんなら、どっちが強いか、明日の朝、相撲をとらせよう。もし木仏が勝ったら、わしの財産をみんなやろう。金仏が勝ったら、お前はこの家で一生ただ働きだ。いいな」 というた。下男はいやと言えず、すごすごと下男部屋へ戻った。 しかし、木仏が金仏に勝つはずがない。下男は荷物をまとめると、長者の家から逃げ出そうとした。すると、木仏が何か言うた。下男がよ―く耳をすますと、 「おれに相撲をとらせてくれ」 というている。下男は、日頃信心してきた木仏がこういうので、ようやく、相撲をとらせる決心がついた 次の日の朝、沢山の下男や下女の前で相撲が始まった。金ぴかに光っている金仏と、薄汚れている木仏では、だれが見ても勝負は決っていた。 ところが、金仏が懸命に押しても、木仏はびくともしない。笑って見ていた長者の顔もだんだん青くなっていった。そのうちに、木仏がドンとついたら、金仏はコロリところげてしまった。 長者が金仏に、 「どうして木仏なんかに負けたんだ」 と泣き泣き聞くと、 「長者様、よ―く考えてみろ。木仏は、おれは一年に年とりの日しか飯を食わせてもらっていねぇ。だから力がでんかった」 と金仏はいうた。 下男は、木仏のおかげで、約束どおり長者の財産をみんなもらって、長者様になったと。 とっちばれ。
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4『田之久(たのきゅう)』
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2011-11-10
4『田之久(たのきゅう)』 ―新潟県― むかし、あるところに、たいへん親思いの田之久という若者が、おっ母(か)さんと二人っきりで暮らしておったと。 田之久は、なかなか芝居がうまかったそうな。 田の仕事が済むと、あちらこちらの村々から頼まれては、芝居を見せて廻っていたと。 ある年の秋のこと。 田之久は、頼まれて、半日もかかる峠の向こうの村へ、芝居を見せに行ったと。 ちょうど芝居がひとくぎりついた夕方頃、一人の村人が言伝(ことづて)を持って来た。 「わしはこの村の者じゃが、用事でお前の村へ行ったら、言伝を頼まれた。お前のおっ母さんが急の病で倒れなさったそうじゃ」 おどろいた田之久が、急いで帰り支度を始めると、村人はあわてて引きとめた。 「なんと、これから帰りなさるか、止(よ)しなされ。気持は分かるが峠の夜道はやめた方がええ、あの峠には、昔から化け大蛇(だいじゃ)が棲んでいて、今までにも夜の峠越えした者が幾人(いくたり)も呑まれとる。」 「そんでも、おっ母さんの容態が気になるすけ」 「そうかぁ、化け大蛇は変化(へんげ)するっちゅうぞ、くれぐれも気い付けぇよ」 「それじゃ」 田之久が峠越えしているうちに真夜中になってしまったと。 それでも気のせくままに急ぎ足していると、 「おおい、待て待て」 と、しわがれ声で呼び止める者がある。 提灯をかざして周囲(あたり)をうかがうと、今し方(がた)通り過ぎた大っきな木のそばに、白い髪の爺(じ)さが立っていたと。 「夜のこの峠を怖れもせず、すたすた歩くお前は何者じゃ」 夜目をすかして、よおく見たら、爺さの顔がヌメ―としているんだと。 <こりゃあ、あの化け大蛇が変化したもんかも知れんぞぉ。よくよく気を丈夫(じょうぶ)に持たにゃあ、へたぁすると呑まれちまう> 「俺らは、峠の向こうの田之久と言う者(もん)だ」 「何だ、人間かと思うたら狸か」 「そういうお前は誰だ」 「わしか、わしはこの山に棲む大蛇だ。お前が本当の狸なら、いろいろ化け方を知っとるだろ、ひとつ化けて見せろ」 田之久は、大蛇が狸と間違えてくれたのをさいわい、背負っていた荷物の中から、芝居に使うカツラやお面を取り出して、それをつけて化けて見せることにした。 「では、いいと言うまで、あっちを向いていれや」 田之久は、大急ぎでカツラと着物をつけて女になって見せた。 「う―ん。狸だけあって見事なもんだ。わしでもこうは化けられん。ところでなぁ狸、お前は世の中で何が一番嫌いだ」 「俺らは、小判が一番嫌いだ。大蛇どんは何が一番嫌いかの」 「わしは煙草のヤニが一番嫌いだ。だが、このこと人間には決して聞かすなよ」 「うん承知した」 「さあ、もういいから早う帰れ」 田之久は、大急ぎで峠を下って村へ帰り、おっ母さんの看病をしたと。それから村人みんなにこのことを話したと。 村人達は、村中で煙草のヤニを集めて、大蛇のいるところへ持って行って投げつけたと。 さすがの大蛇も、これには七転八倒。苦しみもがいて、息も絶え絶えになってようやく逃げたと。 「こりゃあ、あの狸奴(たぬきやつ)のせいに違いない。仕返しせずにおくものか」 と、怒りに怒って、田之久の家へやって来ると、高窓から大声で、 「こりゃあ、狸め、あんげに人間に聞かせんなと言ったのに、よくも聞かせたなぁ。もう勘弁ならん。それ!これでもくらえ」 こう言うと、小判のいっぱい入った箱を家の中に投げ込んで帰って行った。 田之久は、怖わがるどころか、してやったりと大いに喜こび、その小判でおっ母さんといつまでも安楽に暮らしたと。 いちがさかえもうした 鍋の下ガリガリ。
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3『偽(にせ)の汽車(きしゃ)』
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2011-11-10
3『偽(にせ)の汽車(きしゃ)』 ―長野県― むかし、というても、ちょっとむかし。そう、今から六十年前のこと。長野県の篠ノ井(しののい)と塩尻を結ぶ、国鉄、篠ノ井線の話だ。 空が曇り、月の見え隠れするある夜、篠ノ井へ向う下り列車が明科(あかしな)を過ぎ、白坂(しらさか)トンネル付近にさしかかったとき、運転士と助手は遠くから汽車の走ってくる音を聞いた。この時間、ほかに走る汽車はない。二人が前方を注意して見ていると、暗い中でも、はっきりと汽車の姿が見えた。 「キ、キ、キ、キシャだ!」 「ていし―!」 二人はあわてた。なにしろ、レ―ルが二本しかない単線だから、そのまま進めば正面衝突をする。運転士は急いで、ピ―、ピ―、ピ―と非常汽笛を鳴らし、急ブレ―キをかけた。向こうの汽車も、ピ-、ピ―、ピ―と非常汽笛を鳴らし、急ブレ―キをかけた。やっとのことで二つの汽車は止まった。 フッと溜息をついた運転手は、一安心して、汽車を後戻りさせた。そうしたら、向うの汽車も後戻りをする。前へ進むと、前へ進んでくる。まるで、鏡で映したように同じことをする。 そのうちに乗客たちは騒ぎ出すし、時間も大分遅れてしまった。どうしたもんかと思っていると、向うの汽車がペカリと消えてしまった。運転手と助手は、 「何が何だか、さっぱりわからん」 といいながら、また、汽車を走らせた。終着駅についたので、二人は駅員たちに、今夜の出来事の一部始終を話して聞かせた。そうしたら、 「二人して、寝ぼけたのだろう」 と、駅員たちからは馬鹿にされるし、偉い人からはしかられるし、さんざんな目にあった。 それからというもの、空が曇り、月の見え隠れする夜は、きまって、同じ場所に、不思議な汽車が現れた。そのうわさが、運転手の間にひろがり、月の見え隠れする夜は、どの運転手も篠ノ井線を走るのをいやがった。 そんなある夜のこと、下り列車が白坂トンネル付近にさしかかった。そうしたら、案の定(じょう)、汽車の音がして、前方に汽車の姿が見えた。助手が、 「うわさの汽車が出ました」 と言うと、肝っ玉の太いそのときの運転手は、 「ええい、進行だ!」 と言って、汽車を全速力で走らせた。向うの汽車も全速力でやってくる。二人が、 「しょ、しょ、正面衝突だぁ!」 とさけんだら、突然、向うの汽車が消えて、 「ギャ-」 という声がした。 翌日の朝、一番列車の運転手は、一匹のキツネが、線路の脇で死んでいるのを見たという。 偽の汽車の正体は、鉄道ができて、すみ家を追われたキツネだったわけさ。 それっきり。
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2『十伝(じゅうでん)どひと日見(ひみ)の狐(きつね)』
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2011-11-10
2『十伝(じゅうでん)どひと日見(ひみ)の狐(きつね)』 ―長崎県― むかし、長崎県の山田というところに、十伝どんという男がおったと。 その頃、やっぱり長崎の日見の峠に、いたずらな狐が棲んでいて、ときどき人をだましていたそうな。 十伝どんは日見の峠の狐を懲らしめてやろうと思って、「焼きネズミのごちそうをする」、と使いをやると、狐は、生まれて初めてのごちそうだといって喜んでやって来た。 十伝どんの家のそばで、トロンときれいな女子に化けて家の戸を叩きよった。 十伝どんな、狐が化けて来ることなんぞ、とぉっくにお見透しなもんで、 「お前の化け方には抜けたところがある。ほれ、尻尾が見えとる」 と、こう、一発かましてやった。 女子に化けた狐は、あわてて尻を確めたと。 「尻尾は出とらん」 「ワッハッハッ、お前に見えんでも、わしが見ればすぐに分かる。わしは変化の名人じゃからのぉ」 「ふ―ん、どうしたら上手に化けられる」 「そうやすやすと教える訳にはいかん。お前は、いったいどうやって化けとるんか」 「おらは、七面(しちめん)ぐりというもので化ける」 「そうだろう、それで尻尾が出るのだ。わしは、八面(はちめん)ぐりというもので化ける。一面ぐりだけ多いから、それだけよい訳だ」 十伝どんがこう言うと、狐はうらやましくてならない。 「その八面ぐりと、おらの七面ぐりと取り換えてくれ」 と言う。十伝どんな、 「そう簡単に取り換える訳にはいかん」 と、もったいぶってやった。 それでも、狐がしきりと頼むので、日を改めて取り換えてやることにしたと。 狐は待ちきれず、その翌日、七面ぐりを持ってやって来た。 十伝どんな、昨日、狐が帰ったあとで、大急ぎで篩(ふるい)に赤紙や青紙をいっぱい張り付けて八面ぐりを作っといたから、この篩を出して、「これを頭にかぶると、どんなことがあっても人に見破られることはない。二つと無いものじゃからして大事に使えよ」 と言って、取り換えてやったと。 狐は、その晩、十伝どんの家に泊って焼きネズミをごちそうになり、翌朝早起きして、八面ぐりをかぶって日見の峠へ帰って行った。 ところが、朝の草刈りの小僧たちがこれを見つけて、 「おおい見ろや、狐が朝から妙なものをかぶって行くぞ」 「青紙や赤紙をつけた篩をかぶって行くぞ」と言って、石を投げつけるやら、棒や鎌で追いまわすやら、大騒ぎ。 狐は命からがら、峠の穴にたどりついた。 十伝め、十伝め、ちゅうて泣いとったと。 次の晩、十伝どんの家に乳母が訪ねて来た。 「十伝や、お前、何でも、珍らしい狐の七面ぐりというものを手に入れたそうだね。冥土(めいど)の土産に、それを見せておくれでないか」 十伝どんな、乳母には頭が上らんから、見せたそうな。 乳母が七面ぐりを手にしたとたん、 「取り返したぁ」 ちゅうて、乳母が狐になって、素早く逃げていったと。 さて、その次の朝、今度は、狐の穴に神主さんの衣裳を着た稲荷大明神さまが表われた。 「これ狐、わしは正一位稲荷大明神なるぞ」 狐は、へへぇ―とかしこまった。 「お前は、大事な七面ぐりを十伝に取られたそうだな」 「そんなことはありません」 「そんなら、あるかどうか見せてみよ」 狐は、あわてて七面ぐりを見せたそうな。 「穴の中では暗(くろ)うてよく見えん。外で調べてみる」 ちゅうて、大明神さまが外へ出たとたん、着ていた衣裳を、ぱっぱっと脱ぎすて、とっとこ、とっとこ峠を下りて行ってしまった。 何と十伝どんであったと。 十伝どんと狐は、それからのちも、まぁだまぁだだましっこをしたっちゅうぞ。 これでしまいばい。
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1-1『おりゅう柳』
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2011-11-10
1-1『おりゅう柳』 ―兵庫県― 昔、ある村に、おりゅうという器量よしの娘(むすめ)がおったそうな。 おりゅうは、峠をひとつ越えた町のお屋敷へ奉公(ほうこう)に行っておったと。 その峠には、太くて高い柳(やなぎ)の木が一本あって、峠を越えるときには、必ずその柳の木の下でひと休みしておったと。 あるとき、おりゅうが峠にさしかかると、柳の木の下に若い男がいたそうな。 ひと休みしながら言葉を交(かわ)すうちに、ふたりは好き合うようになったと。 それからというもの、おりゅうは夜になると、そおっとお屋敷を抜け出し、脇目(わきめ)もふらず峠の柳の下へ行くようになった。 眠る時間を惜(お)しんだおりゅうの身体は、日が経(た)つにつれ、だんだん弱って、とうとう里(さと)の家(いえ)に引きとられたと。 おりゅうが床(とこ)に伏せって何日か経った夜、風がゴォッと吹いて、機の枝葉がゴワゴワ鳴った。ふと目をさましたおりゅうのかたわらには、男が座っておったと。そして、夜も白みかけた頃、男は帰って行った。あとには、どうしたわけか柳の葉が一枚落ちていたと。 次の夜も、その次の夜も風がゴォッと吹いて、木の枝葉がゴワゴワ鳴ると、男は訪ねて来たと。男が帰ったあとには、やっぱり柳の葉が一枚落ちていたと。 そんなある夜、男がさびしそうな顔をして言った。 「もうお前にも会えんようになる。今日は別れを言いに来た」 理由(わけ)をたずねたおりゅうに、男は打ちあけたそうな。男は、実は、峠の柳の木の精だったそうな。 そのころ、京の都に三十三間堂を建てる話が出ていたそうな。三十三間も伸びた木はめったにあるもんじゃぁない。それで、峠の柳の木を棟木(むなぎ)に使うことになったそうな。 「明日には木挽(こび)きが大勢来て、俺を切るだろう」 おりゅうも男も黙りこんでしまったと。 次の日、峠には大勢の木挽きがやって来た。 柳の木を切り始めたが、何しろ太くて高い木だったから、一日や二日で切れるものではない。晩方になって、木挽きが「また明日やるまいか」と仕事じまいして、次の朝行ってみると、切り口(くち)は元どおりにくっついているそうな。あくる日も、そのまたあくる日も同じことがおこる。 気味悪くなった木挽の親方が鎮守(ちんじゅ)様にお伺いをたてたと。そうしたらその晩、夢ざとしがあったと。 「仕事場に火をたいて、木くずが出るかたはしから燃やすがよい」 こんな夢ざとしだったと。 そのころ、おりゅうの夢枕にも柳の木の精があらわれて、 「いよいよ明日は切られてしまう。切られたあと、俺はてこでも動かんつもりだ。そこでおりゅう、お前が来て俺をひいてくれ。いいね」 こう言ったそうな。 さて次の朝、木挽きの親方は、仕事場に火をたいて、木くずをどんどん燃やした。柳はどおっと倒れたそうな。 それから、切った柳を台車に乗せて京へ運ぼうとするけど、柳はびくとも動かないのだと。困り果てているところへおりゅうが来た。 おりゅうが、柳の木に何事かをやさしく話しかけてから、先頭に立って台車の綱を引くと、台車は、すうっと動いたと。 それで大柳をやっと京の都へ送って、三十三間堂がめでたく出来上がったそうな。 おりゅうには、たくさんのほうびが出たそうな。 いっちこ たぁちこ。
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吉林大学主催の「笹川杯日本国情知識コンテスト(東北地域)」
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2011-11-10
20011年4月17日、吉林省長春市にある吉林大学外国語学院日本語学部の主催になっている日本知識コンテストが開催された。 延辺大学から金正雄先生が引率した3人の学生が参加し、崔維京選手が個人戦に決勝までいったものの、三位内には入れず優秀賞に止まった。
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