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두자춘(일한번역문)
杜子春(芥川龍之介)
天馬
故郷を想う
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아우님이 이토록 활약하는 줄 몰랐습니다. 옹근 2년이나 사이트들에서 잠적하다가 돌아오니 아우님이 보이시네. 반갑수다. 이제 우리 만나면 그간 회포를 잘 풀어 봄이 어떠하리오...
곧 《간도빨치산의 노래》전문을 싣도록 하겠습니다. 이 글은 연변문학 2013년 제2기와 제3기에 실렸던 글입니다. 연변문학 2기에 조선글로 된 원문이 실려있습니다.
좋은 글 잘 읽었습니다. 《간도빨치산의 노래》전문은 어디에서 볼수 있습니까? 읽어보고 싶은데요.그때 상황도 더 료해해보고...
참 의미심장한 이야기 입니다.
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6『竜宮猫(りゅうぐうねこ)』
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2011-11-10
6『竜宮猫(りゅうぐうねこ)』 ―福岡県― とんと昔のことや。 あるところに三人の姉妹(しまい)がおったんやと。 おおきゅうなって、三人とも嫁(とつ)いで行ったが盆暮になると、きまって、里の母ごに呼び出されて贈り物ばさせられておったんやと。 上の二人は、さいわい分限者に嫁いだもんやき、なんの苦労もなかばって、末(すえ)の娘は貧(まず)しい男に嫁いだもんやき、いつも、贈り物には困っておったんやと。 そんで、末娘夫婦は、里の母ごに、ことあたんびに呼び出されちゃあ、こきつかわれておったんやと。 それでも、末娘の夫は、気のええ男やったから、そん年の暮には、柴を持って、嫁の母ごのところへ、あいさつばしに出かけたんやと。 ばって、そん男は、浜づいたいの道々に考えたんやと。 「どうせ、嫁の里へ行ったっちゃ、こきつかわれるばっかしや。ほんならいっそのことこん柴を竜神さまに流したほうが、ましや」 そん男は、柴を竜宮へむけて流したんやと。 浜べに座って、柴の流れていった沖の方ば見とったら、竜宮から乙姫(おとひめ)さんがそん男を連れに来たんやと。 竜宮では、龍神さまが待っとらっしゃって、そん男ば見ると、そばの猫ば指してくさ、 「この猫は、わたしの三つの宝のうちの一つだけれど、柴をもらったお返しに、この猫をお前にあげよう。この猫は、毎日、小豆(あずき)を一合食べるから、必ず食べさせておくれ。一合食べれば、必ず、三合の宝物を産む猫だから」 ちゅうて、そん猫を男に与(あた)えたんやと。 男は、乙姫さんに送ってもらい、猫を抱いて我家に帰ってくると、毎日、嫁といっしょに、一合の小豆ば煮て、そん猫に食べさせたんやと。 そんで末娘夫婦は、またたく間に大金持ちになったんやと。 そん話ば聞いた、里の欲ん深けえ母ごが、末娘んとこさやって来て、うむも言わさず、そん猫ば抱いて帰って行ったんやと。 そして、欲の深けえことに、毎日三合ずつ小豆ば食べさせたもんやき、猫は、すぐに死んでしもうたんやと。 心痛(いた)んだ末娘夫婦は、そん死んだ猫の身体ば抱いて帰り、裏の庭に墓ばこさえて、埋めたんやと。 そしたら、そん墓のそばから、竹が二本、三本とはえ、それが、すっく、すっくとのびていってくさ、 ひと風吹けば、ザラザラザラッ、 ふた風吹けば、ザラザラザラッ、 とな、風の吹くたびに、ぎょうさんな黄金(こがね)ば降らしてくれたんやと。 ザラザラザラ、ザンザラン、とな。 それぎんのとん。
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5『木仏長者(きぼとけちょうじゃ)』
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2011-11-10
5『木仏長者(きぼとけちょうじゃ)』 ―青森県― むかし。ある長者が、金(キン)で作った、それはそれはみごとな仏さまを持っていた。長者はいっつも、下男な下女に、 「この世に二つとない金仏(カナボトケ)じゃ」 というて、自慢しておった。 あるとき、下男の一人が山へたき木を取りに行くと、仏様の形をした木が落ちていた。 下男は、 「木仏(キボトケ)じゃ、木仏じゃ」 と喜んで、その木を拾って帰ってきた。 そして、下男部屋の片隅に置き、朝・昼・晩、飯をお供えして、おがんでいた。 それを聞いた長者は、生意気だ、と下男を呼び出し、 「お前は毎日、仏様をおがんでいるそうだが、わしにその仏様を見せろ」 と言うた。下男はみすぼらしい木仏だから、見せたくはなかったが、いいつけだからしかたがない。木仏を持って行くと、長者は一目見て、 「な―んだ、仏様といってもただの木仏ではないか。わしのは金で作った金仏じゃ」 と大声で笑った。それで、下男も黙っておれず、つい、 「金でも木でも、仏様には変わりはありません」 というてしまった。すると、長者は、 「そんなら、どっちが強いか、明日の朝、相撲をとらせよう。もし木仏が勝ったら、わしの財産をみんなやろう。金仏が勝ったら、お前はこの家で一生ただ働きだ。いいな」 というた。下男はいやと言えず、すごすごと下男部屋へ戻った。 しかし、木仏が金仏に勝つはずがない。下男は荷物をまとめると、長者の家から逃げ出そうとした。すると、木仏が何か言うた。下男がよ―く耳をすますと、 「おれに相撲をとらせてくれ」 というている。下男は、日頃信心してきた木仏がこういうので、ようやく、相撲をとらせる決心がついた 次の日の朝、沢山の下男や下女の前で相撲が始まった。金ぴかに光っている金仏と、薄汚れている木仏では、だれが見ても勝負は決っていた。 ところが、金仏が懸命に押しても、木仏はびくともしない。笑って見ていた長者の顔もだんだん青くなっていった。そのうちに、木仏がドンとついたら、金仏はコロリところげてしまった。 長者が金仏に、 「どうして木仏なんかに負けたんだ」 と泣き泣き聞くと、 「長者様、よ―く考えてみろ。木仏は、おれは一年に年とりの日しか飯を食わせてもらっていねぇ。だから力がでんかった」 と金仏はいうた。 下男は、木仏のおかげで、約束どおり長者の財産をみんなもらって、長者様になったと。 とっちばれ。
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4『田之久(たのきゅう)』
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2011-11-10
4『田之久(たのきゅう)』 ―新潟県― むかし、あるところに、たいへん親思いの田之久という若者が、おっ母(か)さんと二人っきりで暮らしておったと。 田之久は、なかなか芝居がうまかったそうな。 田の仕事が済むと、あちらこちらの村々から頼まれては、芝居を見せて廻っていたと。 ある年の秋のこと。 田之久は、頼まれて、半日もかかる峠の向こうの村へ、芝居を見せに行ったと。 ちょうど芝居がひとくぎりついた夕方頃、一人の村人が言伝(ことづて)を持って来た。 「わしはこの村の者じゃが、用事でお前の村へ行ったら、言伝を頼まれた。お前のおっ母さんが急の病で倒れなさったそうじゃ」 おどろいた田之久が、急いで帰り支度を始めると、村人はあわてて引きとめた。 「なんと、これから帰りなさるか、止(よ)しなされ。気持は分かるが峠の夜道はやめた方がええ、あの峠には、昔から化け大蛇(だいじゃ)が棲んでいて、今までにも夜の峠越えした者が幾人(いくたり)も呑まれとる。」 「そんでも、おっ母さんの容態が気になるすけ」 「そうかぁ、化け大蛇は変化(へんげ)するっちゅうぞ、くれぐれも気い付けぇよ」 「それじゃ」 田之久が峠越えしているうちに真夜中になってしまったと。 それでも気のせくままに急ぎ足していると、 「おおい、待て待て」 と、しわがれ声で呼び止める者がある。 提灯をかざして周囲(あたり)をうかがうと、今し方(がた)通り過ぎた大っきな木のそばに、白い髪の爺(じ)さが立っていたと。 「夜のこの峠を怖れもせず、すたすた歩くお前は何者じゃ」 夜目をすかして、よおく見たら、爺さの顔がヌメ―としているんだと。 <こりゃあ、あの化け大蛇が変化したもんかも知れんぞぉ。よくよく気を丈夫(じょうぶ)に持たにゃあ、へたぁすると呑まれちまう> 「俺らは、峠の向こうの田之久と言う者(もん)だ」 「何だ、人間かと思うたら狸か」 「そういうお前は誰だ」 「わしか、わしはこの山に棲む大蛇だ。お前が本当の狸なら、いろいろ化け方を知っとるだろ、ひとつ化けて見せろ」 田之久は、大蛇が狸と間違えてくれたのをさいわい、背負っていた荷物の中から、芝居に使うカツラやお面を取り出して、それをつけて化けて見せることにした。 「では、いいと言うまで、あっちを向いていれや」 田之久は、大急ぎでカツラと着物をつけて女になって見せた。 「う―ん。狸だけあって見事なもんだ。わしでもこうは化けられん。ところでなぁ狸、お前は世の中で何が一番嫌いだ」 「俺らは、小判が一番嫌いだ。大蛇どんは何が一番嫌いかの」 「わしは煙草のヤニが一番嫌いだ。だが、このこと人間には決して聞かすなよ」 「うん承知した」 「さあ、もういいから早う帰れ」 田之久は、大急ぎで峠を下って村へ帰り、おっ母さんの看病をしたと。それから村人みんなにこのことを話したと。 村人達は、村中で煙草のヤニを集めて、大蛇のいるところへ持って行って投げつけたと。 さすがの大蛇も、これには七転八倒。苦しみもがいて、息も絶え絶えになってようやく逃げたと。 「こりゃあ、あの狸奴(たぬきやつ)のせいに違いない。仕返しせずにおくものか」 と、怒りに怒って、田之久の家へやって来ると、高窓から大声で、 「こりゃあ、狸め、あんげに人間に聞かせんなと言ったのに、よくも聞かせたなぁ。もう勘弁ならん。それ!これでもくらえ」 こう言うと、小判のいっぱい入った箱を家の中に投げ込んで帰って行った。 田之久は、怖わがるどころか、してやったりと大いに喜こび、その小判でおっ母さんといつまでも安楽に暮らしたと。 いちがさかえもうした 鍋の下ガリガリ。
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3『偽(にせ)の汽車(きしゃ)』
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2011-11-10
3『偽(にせ)の汽車(きしゃ)』 ―長野県― むかし、というても、ちょっとむかし。そう、今から六十年前のこと。長野県の篠ノ井(しののい)と塩尻を結ぶ、国鉄、篠ノ井線の話だ。 空が曇り、月の見え隠れするある夜、篠ノ井へ向う下り列車が明科(あかしな)を過ぎ、白坂(しらさか)トンネル付近にさしかかったとき、運転士と助手は遠くから汽車の走ってくる音を聞いた。この時間、ほかに走る汽車はない。二人が前方を注意して見ていると、暗い中でも、はっきりと汽車の姿が見えた。 「キ、キ、キ、キシャだ!」 「ていし―!」 二人はあわてた。なにしろ、レ―ルが二本しかない単線だから、そのまま進めば正面衝突をする。運転士は急いで、ピ―、ピ―、ピ―と非常汽笛を鳴らし、急ブレ―キをかけた。向こうの汽車も、ピ-、ピ―、ピ―と非常汽笛を鳴らし、急ブレ―キをかけた。やっとのことで二つの汽車は止まった。 フッと溜息をついた運転手は、一安心して、汽車を後戻りさせた。そうしたら、向うの汽車も後戻りをする。前へ進むと、前へ進んでくる。まるで、鏡で映したように同じことをする。 そのうちに乗客たちは騒ぎ出すし、時間も大分遅れてしまった。どうしたもんかと思っていると、向うの汽車がペカリと消えてしまった。運転手と助手は、 「何が何だか、さっぱりわからん」 といいながら、また、汽車を走らせた。終着駅についたので、二人は駅員たちに、今夜の出来事の一部始終を話して聞かせた。そうしたら、 「二人して、寝ぼけたのだろう」 と、駅員たちからは馬鹿にされるし、偉い人からはしかられるし、さんざんな目にあった。 それからというもの、空が曇り、月の見え隠れする夜は、きまって、同じ場所に、不思議な汽車が現れた。そのうわさが、運転手の間にひろがり、月の見え隠れする夜は、どの運転手も篠ノ井線を走るのをいやがった。 そんなある夜のこと、下り列車が白坂トンネル付近にさしかかった。そうしたら、案の定(じょう)、汽車の音がして、前方に汽車の姿が見えた。助手が、 「うわさの汽車が出ました」 と言うと、肝っ玉の太いそのときの運転手は、 「ええい、進行だ!」 と言って、汽車を全速力で走らせた。向うの汽車も全速力でやってくる。二人が、 「しょ、しょ、正面衝突だぁ!」 とさけんだら、突然、向うの汽車が消えて、 「ギャ-」 という声がした。 翌日の朝、一番列車の運転手は、一匹のキツネが、線路の脇で死んでいるのを見たという。 偽の汽車の正体は、鉄道ができて、すみ家を追われたキツネだったわけさ。 それっきり。
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2『十伝(じゅうでん)どひと日見(ひみ)の狐(きつね)』
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2011-11-10
2『十伝(じゅうでん)どひと日見(ひみ)の狐(きつね)』 ―長崎県― むかし、長崎県の山田というところに、十伝どんという男がおったと。 その頃、やっぱり長崎の日見の峠に、いたずらな狐が棲んでいて、ときどき人をだましていたそうな。 十伝どんは日見の峠の狐を懲らしめてやろうと思って、「焼きネズミのごちそうをする」、と使いをやると、狐は、生まれて初めてのごちそうだといって喜んでやって来た。 十伝どんの家のそばで、トロンときれいな女子に化けて家の戸を叩きよった。 十伝どんな、狐が化けて来ることなんぞ、とぉっくにお見透しなもんで、 「お前の化け方には抜けたところがある。ほれ、尻尾が見えとる」 と、こう、一発かましてやった。 女子に化けた狐は、あわてて尻を確めたと。 「尻尾は出とらん」 「ワッハッハッ、お前に見えんでも、わしが見ればすぐに分かる。わしは変化の名人じゃからのぉ」 「ふ―ん、どうしたら上手に化けられる」 「そうやすやすと教える訳にはいかん。お前は、いったいどうやって化けとるんか」 「おらは、七面(しちめん)ぐりというもので化ける」 「そうだろう、それで尻尾が出るのだ。わしは、八面(はちめん)ぐりというもので化ける。一面ぐりだけ多いから、それだけよい訳だ」 十伝どんがこう言うと、狐はうらやましくてならない。 「その八面ぐりと、おらの七面ぐりと取り換えてくれ」 と言う。十伝どんな、 「そう簡単に取り換える訳にはいかん」 と、もったいぶってやった。 それでも、狐がしきりと頼むので、日を改めて取り換えてやることにしたと。 狐は待ちきれず、その翌日、七面ぐりを持ってやって来た。 十伝どんな、昨日、狐が帰ったあとで、大急ぎで篩(ふるい)に赤紙や青紙をいっぱい張り付けて八面ぐりを作っといたから、この篩を出して、「これを頭にかぶると、どんなことがあっても人に見破られることはない。二つと無いものじゃからして大事に使えよ」 と言って、取り換えてやったと。 狐は、その晩、十伝どんの家に泊って焼きネズミをごちそうになり、翌朝早起きして、八面ぐりをかぶって日見の峠へ帰って行った。 ところが、朝の草刈りの小僧たちがこれを見つけて、 「おおい見ろや、狐が朝から妙なものをかぶって行くぞ」 「青紙や赤紙をつけた篩をかぶって行くぞ」と言って、石を投げつけるやら、棒や鎌で追いまわすやら、大騒ぎ。 狐は命からがら、峠の穴にたどりついた。 十伝め、十伝め、ちゅうて泣いとったと。 次の晩、十伝どんの家に乳母が訪ねて来た。 「十伝や、お前、何でも、珍らしい狐の七面ぐりというものを手に入れたそうだね。冥土(めいど)の土産に、それを見せておくれでないか」 十伝どんな、乳母には頭が上らんから、見せたそうな。 乳母が七面ぐりを手にしたとたん、 「取り返したぁ」 ちゅうて、乳母が狐になって、素早く逃げていったと。 さて、その次の朝、今度は、狐の穴に神主さんの衣裳を着た稲荷大明神さまが表われた。 「これ狐、わしは正一位稲荷大明神なるぞ」 狐は、へへぇ―とかしこまった。 「お前は、大事な七面ぐりを十伝に取られたそうだな」 「そんなことはありません」 「そんなら、あるかどうか見せてみよ」 狐は、あわてて七面ぐりを見せたそうな。 「穴の中では暗(くろ)うてよく見えん。外で調べてみる」 ちゅうて、大明神さまが外へ出たとたん、着ていた衣裳を、ぱっぱっと脱ぎすて、とっとこ、とっとこ峠を下りて行ってしまった。 何と十伝どんであったと。 十伝どんと狐は、それからのちも、まぁだまぁだだましっこをしたっちゅうぞ。 これでしまいばい。
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1-1『おりゅう柳』
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2011-11-10
1-1『おりゅう柳』 ―兵庫県― 昔、ある村に、おりゅうという器量よしの娘(むすめ)がおったそうな。 おりゅうは、峠をひとつ越えた町のお屋敷へ奉公(ほうこう)に行っておったと。 その峠には、太くて高い柳(やなぎ)の木が一本あって、峠を越えるときには、必ずその柳の木の下でひと休みしておったと。 あるとき、おりゅうが峠にさしかかると、柳の木の下に若い男がいたそうな。 ひと休みしながら言葉を交(かわ)すうちに、ふたりは好き合うようになったと。 それからというもの、おりゅうは夜になると、そおっとお屋敷を抜け出し、脇目(わきめ)もふらず峠の柳の下へ行くようになった。 眠る時間を惜(お)しんだおりゅうの身体は、日が経(た)つにつれ、だんだん弱って、とうとう里(さと)の家(いえ)に引きとられたと。 おりゅうが床(とこ)に伏せって何日か経った夜、風がゴォッと吹いて、機の枝葉がゴワゴワ鳴った。ふと目をさましたおりゅうのかたわらには、男が座っておったと。そして、夜も白みかけた頃、男は帰って行った。あとには、どうしたわけか柳の葉が一枚落ちていたと。 次の夜も、その次の夜も風がゴォッと吹いて、木の枝葉がゴワゴワ鳴ると、男は訪ねて来たと。男が帰ったあとには、やっぱり柳の葉が一枚落ちていたと。 そんなある夜、男がさびしそうな顔をして言った。 「もうお前にも会えんようになる。今日は別れを言いに来た」 理由(わけ)をたずねたおりゅうに、男は打ちあけたそうな。男は、実は、峠の柳の木の精だったそうな。 そのころ、京の都に三十三間堂を建てる話が出ていたそうな。三十三間も伸びた木はめったにあるもんじゃぁない。それで、峠の柳の木を棟木(むなぎ)に使うことになったそうな。 「明日には木挽(こび)きが大勢来て、俺を切るだろう」 おりゅうも男も黙りこんでしまったと。 次の日、峠には大勢の木挽きがやって来た。 柳の木を切り始めたが、何しろ太くて高い木だったから、一日や二日で切れるものではない。晩方になって、木挽きが「また明日やるまいか」と仕事じまいして、次の朝行ってみると、切り口(くち)は元どおりにくっついているそうな。あくる日も、そのまたあくる日も同じことがおこる。 気味悪くなった木挽の親方が鎮守(ちんじゅ)様にお伺いをたてたと。そうしたらその晩、夢ざとしがあったと。 「仕事場に火をたいて、木くずが出るかたはしから燃やすがよい」 こんな夢ざとしだったと。 そのころ、おりゅうの夢枕にも柳の木の精があらわれて、 「いよいよ明日は切られてしまう。切られたあと、俺はてこでも動かんつもりだ。そこでおりゅう、お前が来て俺をひいてくれ。いいね」 こう言ったそうな。 さて次の朝、木挽きの親方は、仕事場に火をたいて、木くずをどんどん燃やした。柳はどおっと倒れたそうな。 それから、切った柳を台車に乗せて京へ運ぼうとするけど、柳はびくとも動かないのだと。困り果てているところへおりゅうが来た。 おりゅうが、柳の木に何事かをやさしく話しかけてから、先頭に立って台車の綱を引くと、台車は、すうっと動いたと。 それで大柳をやっと京の都へ送って、三十三間堂がめでたく出来上がったそうな。 おりゅうには、たくさんのほうびが出たそうな。 いっちこ たぁちこ。
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